楽曲紹介「Clarinet Candy(クラリネット・キャンディ)」

Tb.パートの大槻です。
カテゴリ「楽曲」では、当団で取り上げている楽曲の紹介をしていきます。
第28回は、『Clarinet Candy(クラリネット・キャンディ)』をご紹介します。

『クラリネット・キャンディ』は、アメリカの作曲家・ルロイ・アンダーソンの1962年の作品で、4本のB♭クラリネットが中心となって演奏されます。 冒頭から、いかにもアメリカのショータイムの始まりといった雰囲気がある、華やかで楽しい楽曲です。

ルロイ・アンダーソンについて

 ルロイ(リロイ)・アンダーソンLeroy Anderson(1908-1975)はマサチューセッツ出身で、ハーバード大学(修士)とニューイングランド音楽院で音楽を学びました。

 30歳を過ぎて、母校ハーバード大学の学生バンドの指揮者を務めていたときに、ボストン・ポップス・オーケストラの指揮者であったアーサー・フィードラーに認められて、作曲家になりました。 アンダーソンは『ジャズ・ピチカート』、『ジャズ・レガート』などを書き一躍人気作曲家になりました。作曲家としては遅いデビューだったんですね。

 アンダーソンは第二次世界大戦中は作曲を中断していましたが、戦後は音楽活動を再開しました。 『シンコペーテッド・クロック』、『ブルー・タンゴ』などのヒット作を出し、スタジオ・オーケストラの指揮者として活躍しました。

 アンダーソンの音楽はライト・クラシックとも呼ばれます。本格的な音楽でありながらユーモアが織り込んである親しみやすい曲という点が特徴です。 軽快で諧謔性に富んだ曲調で知られ、今日でもポップス・オーケストラの定番として演奏され続けています。



 アンダーソンは語学と音楽にかけては、あふれる才能を物語るエピソードがたくさんある人です。

 語学については、10か国ほどの言語に通じ、ハーバード大学でも成績優秀者からさらに絞り込まれた学生だけが選ばれる賞を受けるほどの成績だったそうです。

 また音楽については、12歳のときには弦楽四重奏曲を作曲したとか、コントラバスを一日で弾きこなすようになったとか、卒業記念に作曲した曲を自らオーケストラを指揮して披露した、などが伝えられています。

 天は二物を与えず、といいますが、アンダーソンの場合は当てはまらないようです。

キャンディとは

 キャンディと聞いて普通に連想するのは「飴」または「お菓子」。「caramel candy」 とか 「mint candy」などですね。

 ちなみに「 candy-colored」 という単語もあります。こちらはカラフルな、色鮮やかな、という意味になります。

 キャンディはカラフルで人をわくわくさせる楽しみなお菓子です。この曲のタイトルは『クラリネット・キャンディ』ですから、クラリネット味の飴ということになりますね。まあ、味は聴いてのお楽しみ、といったところでしょうか。

 いろいろな楽団で取り上げられることのある曲ですが、演奏スタイルもバラエティーに富んでいるようです。 標準的なB♭クラ4本の演奏ではなく、Alto Clarinet, Bass Clarinet を加えてクラリネット・ファミリー全体で演奏したり、フリをつけるなどエンタメ性を工夫した演奏もあるようです。

 曲の楽しさもさることながら、視覚的にもコンサートに変化を与える効果があり、プログラムを組む上で重宝する一曲です。

クラリネットの魅力

 この曲は、初めはクラリネットとピアノという構成でしたが、その後コンサート・バンド版が作られました。

 クラリネットとピアノ版も、クラ1本、2本、4本と、さまざまあるようです。クラリネット・パートの方は吹き比べをしてみてはいかがでしょうか。

 アンダーソンはクラリネットのポテンシャルについて、非常に多くのことができる楽器と評価していたそうです。 特に低音域と高音域とでは、まるで別の楽器のような表情がある点に興味を抱いたようです。

 クラリネットは通常オーケストラでは2本しかないものですが、アンダーソンはこれを4本に増やした上で、低音域と高音域それぞれの味を生かすように曲を書きました。 たとえば曲の中間部分では、メロディーを低音で演奏し、高音でフィルインをつけるようにしています。 演奏のときはこうした対比効果をアピール・ポイントにするといいかも知れません。